THE SPOTLIGHT JOURNAL

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特別報告者の発言は国連も認めた科学的知見に勝るのか?

早いもので当ブログを開設して70日以上が過ぎました。「更新の頻度はマイペース」と言いつつも大体1~2日に1本記事を書き上げていたので、今後は少しペースを落としつつ更新していきたいと思います。

 

さて、今回の記事はだいぶ日数が過ぎているが、こちらの話題。

 

【米州総局】国連人権理事会で有害物質の管理・処理などを担当するトゥンジャク特別報告者は25日、国連本部で会見し、東京電力福島第1原子力発電所の事故で避難した子どもや出産年齢の女性の帰還について「問題視している」と述べた。被曝(ひばく)線量が年間1ミリシーベルト以下という基準が適切で、20ミリシーベルト以下で避難指示を解除している日本政府の対応を批判した。

 (引用終了)

 <出典>国連報告者、福島事故の帰還で日本を批判 :日本経済新聞

 

これについて日本政府側は、

 

  1. ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告では、避難などの対策が必要な緊急時の目安として、年間の追加被曝線量を20m㏜より大きく100m㏜までとしている。
  2. その上で、日本政府はもっとも低い「年間20m㏜以下」になることを避難指示解除の基準に用いている。
  3. また、その追加被曝線量も除染などによって長期的には年間1m㏜を目指すという方針である
  4. 避難指示が解除されても帰還が強制されることはない。

 

と説明しており、特別報告者の指摘は誤解に基づいていると反論した。

 

 

「報告者の発言=国連の意見」であるかのように印象操作するメディア

 

そもそも「特別報告者」とは? 

 

特別報告者(人権特別報告者)とは、一体どういう人間なのか。国連広報センターの用語集より引用。

 

国連人権理事会により任命された個人の独立専門家で、特定の国における人権状況やテーマ別の人権状況について調査、監視、公表を行います。通常5名からなるワーキンググループと合わせて「特別手続き」と総称されます。いずれも個人の資格で任務につき、中立的に職務を遂行できるよう給与その他の金銭的報酬を受けません。特別手続には、国別とテーマ別の2つの手続があります。

<出典>用語集|国連広報センター

 

つまり、特別報告者というのは国連人権委員会が任命した独立した個人であって、国連の職員でも何でもない。つまり、その報告者が必ずしも国連の総意を代弁しているとは限らないのだ。

 

また、その勧告(recommendation)に強制力はない。つまり、無視したとしても特にペナルティがある訳ではない。

 

<参考>【歴史戦】国連人権理事会 暫定報告書を採択 - 産経ニュース

 

トゥンジャク氏「年間1m㏜」発言について

 

しかし、今回のトゥンジャク氏の発言について「勧告に従わない日本政府はけしからん!」といった主張が反原発界隈に目立った他、メディアの報道姿勢を見ると、あたかも日本の基準について問題があるかの様にミスリードしている表現が見受けられた。

 

例えば、引用した日経新聞の記事もそうだが、トゥンジャク氏の「被曝線量は年間1m㏜以下という基準が適切」という発言について、その「年間1m㏜」が原発由来の放射線被曝(追加被曝)の線量なのか、自然界由来の放射線被曝も含めた線量なのか一切触れていない。これでは誤解を生みかねない。

 

というより、「自然放射線被曝が年間1m㏜以下の場所が地球上のどこに存在するのか?」とツッコミを入れたくもなるが。

 

UNSCEARの報告書を無視する国連崇拝者たち

 

福島第一原発事故による健康被害については既に結論付けられている

 

福島第一原発由来の放射線被曝による健康被害は出ていない」という事実は、もはや多くの科学者が指摘している事だ。その根拠となるのが、原発事故後にUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)が2014年4月に公表した報告書(2013年報告書)である。

 

この報告書は、世界中から80人以上の専門家が世界中で発表された約2000以上の論文について精査を重ねて作成され、国連総会の承認を経て公表されたものである。

 

それによれば、

 

短期的には、福島第一原発事故後の放射線被ばくによる確定的健康影響は、公衆においては観察されていない。また、線量が健康影響のしきい値をはるかに下回るレベルであったため、長期的にも健康影響は予測されていない。

 

(236ページ II. 福島第一原発事故に起因する放射線被ばくによる公衆の健康影響 A. 観察された健康影響 E15)

 

としており、原発事故後に確認された健康被害の原因は、地震津波で家族や友人を失った事による悲しみや避難生活の長期化、原発事故による放射線が健康にもたらすリスクなどへの不安等からくる「心理的精神的影響」によるものとしている。

 

この知見は、UNSCEARがその後2017年に発表した最新の報告書(『2013年報告書刊行後の進展』)でも「引き続き有効」とされ「それ以降に発表された新規情報の影響をほとんど受けていない」という結論に至っている。

 

UNSCEARの報告は、世界の放射線に関する指針の根拠そのもの

 

UNSCEARの報告書は「世界中の国々が原子力関連で従うべきルールの根拠そのもの」であり、「世界で共有するべき福島第一原発事故に対する科学的知見そのもの」でもあるといえる。

 

なぜならば、その報告書を元にICRPが勧告を出し、その勧告にもとづいてIAEA国際原子力機関)が出したガイドラインに沿って日本をはじめとする国連加盟国は、それぞれの放射線に関する法律や指針を作成するためだ。そして、上述した様にその報告書は、国連総会の承認を経た上で公表される。

 

原発界隈が国連人権委員会の特別報告者の発言をありがたがるのに、同じ国連の機関であるUNSCEARやICRPの知見を無視するのは何故? 

 

人権に関わる問題だからこそ、科学的事実に基づく説明が大切

 

福島第一原発事故の影響で避難を強いられた福島県民の人数は、ピーク時で16万4865人(2012年5月)に達した、2018年7月時点でも4万4000人以上が未だに元居た場所へ帰れずにいる。

 

その中には、地震津波によって大切な家族や友人を失った人間もいれば、放射能汚染によって耕作地の放棄、近海での漁業の禁止を強いられて生活の糧を失った人間もいる。

 

また、避難生活先の学校や職場などで陰湿ないじめに遭うケースも後を絶たない。確かに、これは切実な人権問題だ。

 

<出典>避難区域の状況・被災者支援 - ふくしま復興ステーション - 福島県ホームページ

 

その福島県民の人権を侵害しているのは、放射能に対する無知や悪意から流される風評であり、それにマスコミや政治家、文化人など社会的に大きな影響力を持つ人間が加担しているという実情がある。これは事故から7年以上経っても変わっていない。

 

だからこそ感情論ではなく科学的事実、客観的なデータに謙虚に向き合った上で、丁寧に説明を繰り返しながら問題を解決していく必要がある。彼らの人権を救済できる最後の希望こそ「科学」であり、それが風評に敗けてはいけないのだ。